障害者が働く意味とは

人類の歴史を振り返ってみると、有史以来、人が生きること=仕事をすることはほとんどセットで行われてきました。

昨今では、ブラック企業や過労死が社会的な大問題になり、「仕事=大変で苦労すること」というイメージが先行している気がします。

働く=端を楽にする

しかし、もちろん、仕事=苦役、という訳ではありません。人はどこまで行っても社会的な生き物であり、社会を通して、人との繋がりがあるからこそ、充実した喜びを感じることができます。

「働く」というと、「生活のために仕方なくすること」のイメージが強いですが、「働く」の語源は「端楽」で、端(はた…周囲)を楽(らく)にすること。

 

普段、周りの人に与えてもらっている恩を返す行為こそが「働く」ということです。

例えば、何気なく私達が利用している道路だって、誰かが汗水を流して一生懸命働いて作ったものです。毎日食べているご飯(お米)だってそうですし、何から何まで、私たちの周りには誰かが労働して生産したもので溢れています。

 

部屋に篭り、社会との接点がない生活をしていると、ついつい普段の生活が平和に送れることを当たり前のように思ってしまうし、自分1人で生きているように錯覚を起こしてしまうものです。

しかし、決して人は1人で生きている訳ではありません。必ず、常に他者との関係性の中で自分の存在を確認する必要があります。

仏教ではこれを縁起(えんぎ)と言い、

自己や仏を含む一切の存在は縁起によって成立しており,したがってそれ自身の本性、本質または実体といったものは存在せず、空である。

とされています。

私も20歳代の時に「本当の自分とは一体なんのか?」と悩んだことがありました。考え抜いた結果、今となっては、当時一生懸命探していた本来の自分などというものは存在せず、幻想であるという結論に至りました。実際は子供を持てば「父親」という自分が存在するし、弟からすれば「兄」という自分が存在するだけの事でしかありません。

つまり、関わる他者が増えれば増えるほど自分の存在は大きく拡大し、様々な自分の顔に気付くことになります。

障害者が働く意味

体や心に障害を持ち、健常者と全く同じように働くことは難しいかもしれません。しかし、障害があってもできることは沢山あります。

管理人自身に障害はありませんが、本業とする理学療法士の仕事の中で障害がある多くの方々と一緒に社会復帰をするためのリハビリとしてお手伝いをさせて頂きました。

子供が2人いる家庭持ちの男性で、働き盛りの年代で突然脳卒中を発症し、重度の片麻痺になってしまった方や、今まで働いていなかった中高年の専業主婦の方が、障害を負ってから働き始めるということもありました。

この方は、辛いリハビリを通して、回復していく、できることが増えていく自分の大きな可能性に気付き、その可能性を社会で試してみたいと思ったそうです。

障害を負うことで引き換えにチャンレンジすること、自分で世界を広げていくことを学んだそうです。

世界が広がる

社会に出て働くと、自然と色んな人と関わることになります。

  • 取引先の人
  • お客さん
  • ビジネスパートナー
  • 同僚
  • 先輩
  • 上司

職場で働く、あるいは自宅でリモートワークをしても構いませんが、仕事をするということは、人と積極的に交わることに他なりません。

人はどこにいてもコミュニティの中に存在しています。仕事を始めると、自分とも合わない人ともお話をする機会がありますし、普段接触しないタイプの方と一緒に何かをすることもあります。

その時に、合わないな、嫌だなぁと思ってしまいがちですが、一方では新たな自分の存在に気付く大チャンスでもあります。

今までのコミュニティの外に人に接することで、また新しい自分の側面に気付きます。そうやって徐々に新しい自分に気付くことで人は成長していきます。

強い自尊心が生まれる

自分で仕事をして、お給料を頂くことは、大きな自尊心を育むことに繋がります。

自尊心とは自分を価値ある存在だと自分で認めること。ハンディキャップを持ちながらでも社会に出て、仕事をし、お金を稼ぐということは大変尊いことです。そして何よりも自分にとって強い自信になります。

人に感謝されることをするからこそ、お給料としてお金を頂けるのです。

自尊心や自己肯定感は幸せに直結すると言われています。人生の目的は人によって様々ですが、「しあわせ」になることは間違いなくその中に含まれるでしょう。

そのためには、まず自尊心を持つことが重要です。

社会貢献ができる

自尊心と大きく関係しているのが「社会貢献度」です。

管理人は職業柄、仕事を定年退職した高齢者とよく関わります。多くの高齢者が口にするのが、「何でも良いから社会貢献したい」ということです。

 

あなたは誰かに何かをプレゼントしたことがありますか?

実はプレゼントって、渡される方ではなく、渡す側が幸せになれるものではないでしょうか。もちろん、こんなもので喜んでもらえるだろうか、などと悩むこともありますが、その分、相手に喜んでもらえればこんなに嬉しいことはありません。

誰かに貢献することで、自分の人生の充実や幸福感が上昇します。

社会に出て、大変なことももちろんありますが、社会に貢献することで、自己効力感やそれにつながる幸福感を得ることが出来る可能性も高くなります。

収入を得る

もちろん、仕事で収入を得るために働きます。生活するために最低限の収入は必要です。

まとめ

働くこと=生活のため、というだけでなく、働くことによって様々なメリットがあります。

  • 世界が広がる
  • 強い自尊心が生まれる
  • 社会貢献ができる
  • 収入を得る

有史以前から、人は仕事と一緒に生活をしてきました。つまり、人にとって仕事とは人生そのものであり、大変重要な意味を持つものだと思います。