
夜眠れないと昼間も眠気があり、活発に考えたり動いたりできないため、人生の幸福度は急激に下がってしまいます。
私が普段リハビリの仕事で関わる患者さんにも不眠症の方は大変多いです。私がリハビリの現場で試して実際に効果があった方法をお伝えします。
なぜ眠れないか?
全ての生物には体内リズムがあり、波があるのが普通です。感情も体調も、何もかも生物である限り波がなければ生きていけないようになっています。これを「バイオリズム」と言います。
人間ももちろん例外ではなく、バイオリズムの中で普段生活しています。
眠れない根本的な原因は、このバイオリズムが崩れていることです。
人間も、原子時代には、昼間狩猟し、日が沈み、暗くなると活動ができないので寝るしかありませんでした。
私たちは、夜になって電気があるからこそ起きていますが、電球が発明されたのは150年ほど前で、それ以前の数百万年間は火はあるものの、基本的に暗くなったら寝る、という暮らしをしていました。
よって、人の体と脳の奥底には、「明るいと起きておく、暗いと眠くなる」という仕組みが組み込まれています。

当たり前だけどすごく大切なこと!
自律神経のリズムが乱れている
バイオリズムと睡眠に関係しているものとして、自律神経があります。
自律神経とは、その名の通り、「自律して動く」神経で、例えば、
- 心臓の鼓動
- 呼吸
- 脈拍
などがそうです。
自律神経には、副交換神経と交感神経があり、副交感神経はリラックスした時に優位になります。交感神経は、いわゆる「ONモード」あるいは「戦闘モード」のことで、興奮している時に脈拍が激しくなった状態の時に優位になっています。
夜眠れない人は、この自律神経の副交換神経が働きにくい状態になっていることが多いです。
入院患者は夜眠れない人が多い
私のリハビリの経験からいうと、入院している患者さんから、夜眠れないという訴えを頻繁に聞きます。
病院の病室は、昔のモデルで設計されているので、部屋にベッドが置いてあり、それ以外はせいぜいテレビくらいしかありません。
昔の医療の大前提である「安静」を考慮した作りになっているのです。医療の常識は明日の非常識です。ここらも変えていかないといけません。
健康な人でもそうですが、部屋にテレビとベッドしかなければ、ベッドで横になり、テレビを見てウトウトする生活になりますよね。これは当たり前のことです。
人間の行動は環境である程度規程されてしまうので、現在の病院の環境は良いものではありません。
入院すると病気そのものは良くなることもありますが、一方で体力が下がってしまう環境であることは間違いないと思います。
私は入眠障害を訴える患者さんに色々と聞き取りをしましたが、大体の方は、睡眠導入剤などの薬で何とか眠っているという状態でした。薬を飲んで無理やり寝ている状態です。
これはやはり体に良くないと思います。
眠れない人に実際に効果があった方法
そこで、私は、眠れない患者さんに色々試してもらいました。
結果、一番良かったのは、
- 昼間に運動したり歩く量を増やし、交感神経を出来るだけ刺激すること。
- 昼間に日光をたくさん浴びること
- 夜は眠れなくても構わないと割り切ること
でした。
鍵となるのは、
昼間は、
- 運動量
- 日光
夜は、
- 精神的な緊張を緩和すること
です。
本当にこれだけでした。
実際に、患者さんには運動量を増やすために、昼間に必ず最低30分以上エルゴメーター(据え置き型の室内用自転車漕ぎ機器)で運動してもらうようにすること、出来るだけ昼間は部屋の外にいて、日光を浴びてもらうようにしました。
結果、ほとんどの患者さんが前よりも寝れるようになったと言っていました。
現代人は人間の根源的な生活が送りにくい状態にある
現代人は、日中の大半を職場の建物の中で過ごし、日光に当たる時間が圧倒的に少なくなっています。意識して外に出る時間を作らなれば自律神経のバイオリズムが崩れやすい状態になってしまうのです。
電車で出勤しているなら、駅を1駅前に降りて歩くなど、自主的・計画的に運動機会を持つようにしないと運動量も少な過ぎる傾向にあります。
「運動し過ぎかな?」と思うくらいでちょうど良いのではないかと思っています。

意識して生活の中に「生物の自然な状態」を取り入れないと何か問題が出る可能性があるよ
自然な生活を心がける
科学が進歩したとはいえ、まだまだ分かっていないことがたくさんあります。
例えば、人類の歴史は600万年ほどといわれていますが(諸説あり)、栄養素のカリウム(K)が発見されたのは、1807年とされており、まだ210年しか経っていません。(科学自体が500年ほどの歴史しかありません)
人間に必要な栄養素が全て分かっているとはとてもいえない状態で、まだまだ発見されていない栄養素があるかもしれません。
車は人間の「足の拡張装置」そのものであり、車が発明されて以降、確実に人類の歩く量は減り、足の機能は弱化しています。
本来は何キロも歩けるように設計されている人間の足ですが、現代日本人で何キロも連続で歩くのはかなりしんどいのではないでしょうか。
私はいつも答えは歴史の中にあると思っているのですが、ここ数百年の歴史ではなく、それ以前にずーっと何百万年も続けてきた人類の生活を送ることが一番人間の体に合っていると思っています。
科学は百年単位で急激に進化していきますが、人間の体の変化はゆっくりなので、とても付いていけていないのが現状です。
つまり、現代人にとって、生活を自然ベースで考え直すことが大切です。
科学の恩恵をしっかりと受けながら、それだけに頼るのではなく、自然と共存していた時代の生き方を意識することも同じくらい大切にしたいものです。
むしろ、科学が発達したからこそ、「自然な生活」の重要性が高まっているのではないでしょうか。