”人のためにやろうとしないこと”で優しくなれる

「人のために」なにかしようとする人がいますが、そういった人は大概失敗します。

質問

”人のために”なにかをするのは道徳的で良いことじゃないか。ほんと、なに言ってんだよ。

ニシノ

そうとも言えないんですよ。人のために!と思ってする行動は、裏切られる可能性があるし、期待が怒りに変わることがあります。特に、誰も望んでいないのに勝手に人のためにする行動は、絶対に何かを期待してはダメです。

もちろん、人のために何かをしようとする気持ちはすごく大切で尊いですが、それが根源的なモチベーションとなっている場合には注意が必要です。

自分で自分に掛ける呪い

例えば家庭がある男性の場合、

私は妻と子供を食べさせるために働いている。

と思っている場合もあるかもしれません。

しかし、子供が思春期になって反抗的になった時に、そういった思考で働いている人は、

誰に飯を食わせてもらってるんだ!

と、つい口にしてしまうかもしれませんよね。

子供からすれば父親に、

ご飯を食べさせてください!

と懇願しているわけではありません。

あくまで、勝手に私たち親が子供を育てているだけのことです。そして、子供たちからお金では買えないようなたくさんの幸せを貰っています。

なので、この場合、

働いてお金を稼ぎ、家族を幸せにする。

というモチベーションで働いている父親であれば、反抗期であろうとなんであろうと、子供に何を言われようと関係ありません。

誰かのためではなく、自分のためであり、好きでやっていることだからです。

絶対的な原則〜他人は変えられない〜

他にもこのような事例をたくさん見かけます。

例えば、リハビリの現場で、私たち理学療法士は、患者の身体、ひいては人生を良くしたいというモチベーションでリハビリをしている人がたくさんいます。

それは一見素晴らしいことのように思いますし、その気持ちは非常に尊いものだと思います。

しかし、患者はそもそも運動などしたくない人たちも多いです。(私たちだって、なかなかダイエットも続かないし、勉強もできませんよね。)

あれだけ言ったのに、全く自発的に運動してくれない…。少しは動かないと身体が良くならないよ…。

という悩みを持っている療法士はたくさんいます。

根気良く患者に伝え続けるのですが、やがて、それは患者への怒りに変わることもあります。

これだけ言ってもやらないんだから、身体が良くならないのは当然。自業自得だ。

と思い込むのです。

患者のため…と言いながら、結局最終的には相手に怒り、憎しみをぶつけることになります。これはお互いにすごく不幸なことだと思います。

なら、始めから相手のためにやらない方が良いです。

これはもちろん、私たちの業界だけのことではありません。

会社の部下に対してもそうですし、自分の子供に対しても同じです。相手のために…というモチベーションでなにかを行う人ほど、相手に勝手に期待を抱き、失望し、裏切られた気になり、勝手に怒りを増幅させることがよくあります。

 

私たちは、職業も関係なく誰もがみな、本当の意味で、他人の人生を変える事はできません。

もし他人が自分の言う通りにしてくれているなら、その場しのぎで私たちの意向に合わせてくれている場合がほとんどでしょう。

私たちが「運動してください!」と強く主張するのと同じ分だけ、”運動しない権利”が患者にあります。

他人には他人の人生があり、私たちには私たちの人生があります。

至って簡単なことで、ただそれだけのことだと思います。

相手を尊重するコミュニケーションとは

この前、私の運営する「平凡」コミュニティに上のような投稿をしたのですが、コミュニケーションの本質として、「人格と意見は別のものとして考える」ことが本当に相手を尊重することに繋がります。

この場合、運動してほしい!という旨を、自身の職業の社会的役目・誇りとして断固として伝えるという姿勢が重要だと思います。

これは私の信念であり、それに従うのも従わないのもあなたの自由である、というスタンスです。

そういう姿勢で望めば、万が一運動してくれなくても裏切られたと感じるような事は無いですし、患者に怒りを感じるようなこともありません。

これこそが本当に、丁寧で対等なコミニケーションであり、相手を尊重した態度だと思います。

まとめ

人のためになにかをやろうとすると、うまくいかないことが多いようです。結果的に、怒りを相手に向けることになる可能性が高いです。

 

誰しも、他人の人生にタッチすることはできません。

自分の信念において必要な事は他人に伝える、ただそれだけが私たちのできることです。

その信念を選択し、自分の人生に取り入れるのか?それは相手が決めることであり、私たちが決めることではありません。

自分の信念のために、自分のために全ての行為を行ってください。

これは、いつでも人に優しく在るために重要なことです。

 

 

これ、内緒ですよ…